2019年 年頭所感
新年あけましておめでとうございます。
日本羊毛産業協会は、昨年会員企業を新たに3社迎え、会員数は34社2団体となりました。
当協会は本邦でのウール製品の価値向上と普及に向け、開発・情報発信を行う
羊毛産業の団体として活動しています。
また、他の繊維業界の各業界団体と足並みを揃え政府や日本繊維連盟に対して
繊維業界活性化のための要望や意見を提出する活動も続けています。
繊維製品全体で見れば羊毛製品のシェアは1%台に過ぎませんが、
欧米や急成長を見せる中国では洗練された
上質な衣料素材としてのウールに対する評価は確立しており
需要も引き続き旺盛です。
近年の当業界の最大の関心事は継続する羊毛価格の上昇です。
昨年8月には、EMI(東部市場価格指標)で2,116セント(豪ドル)と
史上最高値を更新しました。
足元、米国が中国からの繊維製品輸入に10%の関税を課したことで
中国の羊毛需要が減退するとの見方が強まり、
価格は若干の落ち着きを見せていまが、需給バランスは依然としてタイトで
今後の上昇を予想する見方が多いのが実際です。
こうした価格上昇に、昨今の原料、労働コスト、エネルギー、
運送費の上昇も加わり、
国内繊維製品の低価格志向が続く環境下で、
日本の羊毛業界企業の収益は圧迫されました。
しかし、この羊毛価格の上昇の背景には、天然素材ウールへの
世界的な需要の高まりがあることを忘れてはいけないでしょう。
需要に牽引される価格上昇は一般にその産業にとって
発展をもたらす好機とされるものだからです。
取り分け中国では富裕層、中間層の拡大とその天然素材志向の高まりの中で
需要が大きく伸びています。
また、日本でもデフレ経済から脱却し、良い商品を適切な価格で
購入する動きも広がっています。
こうした動きを踏まえ、業界としては、まず、国内で天然素材ウールの
価値と魅力を強く伝えていきたいと考えています。
その機能的な素晴らしさに加え海洋汚染につながるマイクロポリエステルへの
懸念や国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)の視点からも、
世界で高く評価されるウールの認知度をわが国でも高め、
日本の消費者にアピールして行きます。
次に、既にウールへの評価が定着している海外市場へのアクセスが不可欠です。
幸い、その前提となる通商問題が大きな改善を見せ、昨年末にはTPP11、
本年2月には日EU EPAが発効します。
これに加え広域経済連携により関税障壁がなくなる方向に進めば、
欧米のみならず成長著しい中国マーケットに対し、
確かな物創りによる高品質な日本製の繊維商品を展開できるように
なるでしょう。
協会としてもこうした動きに最大限の協力を行い
日本の羊毛産業の発展のために尽力する所存です。
2019年1月1日
日本羊毛産業協会 会長 富田 一弥