2022年 年頭所感
新年あけましておめでとうございます。
昨年を振り返ると、世界的な新型コロナウイルス感染拡大(以下コロナ)が続き、
その対応策である各国の行動制限措置等で経済活動が大きな制約を受けた1年でした。
尤もわが国では足元ワクチン接種の進展や生活行動の自粛もあり落ち着きを見せていますが、
オミクロン株の出現など、引き続き予断を許さない状況が続いています。
更に、米中の対立やロシアと欧州との地政学的な対立も見られ、コロナの影響と相まって
サプライチェーンの混乱やこれに起因する世界的な物価上昇が懸念される状況にもあります。
私ども日本羊毛産業協会は、羊毛製品の価値向上と普及に向け、開発・情報発信を行う
羊毛産業の団体であり、日本繊維連盟に加入し他の繊維業界の各種団体と足並みを揃え
経産省やその他の政府機関に対して繊維業界活性化のための要望や意見を提出する活動を
続けています。
こうした活動を行う当業界にとっての最大の関心事は、その経営に大きな影響を与える
羊毛価格の動向です。中国の旺盛な需要から羊毛価格は2018年にEMI(東部市場価格指標)
で既往ピークの2000豪セント/キロ台となった後、米中貿易摩擦、そしてコロナの影響を受け
2020年には850セント台まで下落した後に、中国需要の回復から1,200~1,400セントの価格
帯で推移しています。
現状中国の電力不足による設備の稼働率低下で調達が減り価格の膠着状態が続いていますが、
今後は欧州の需要の回復などから上昇に転じるとの見方が強くなっており、業界への影響が
懸念されます。
現時点ではコロナがもたらした経営環境の変化は以下のようなものだと認識しています。
まず、第一に消費の二極化。
高級品と汎用的機能商品の需要が高まり中間的な商品が低迷しています。
第二にDX化の進展。第三にSDGsの流れの強まり。そして上述の物価上昇でしょうか。
この状況は羊毛産業にとっては危機であるとともに大きなチャンスであると捉えています。
消費の二極化はラグジュアリー商品、上質なウール商品への需要を、また吸湿性や消臭性を
持つ高い機能性から汎用品のなかでのウールの需要を高めます。
DXを通じたEC、D2Cの拡大は商流の合理化や在庫の削減を通じウール業界の負担を
少なくしてくれるはずです。
また、SDGsの流れは、天然素材であるウールの評価を高めてくれます。
そして物価上昇です。世界の羊毛業界がウールへの需要の高まりで好業績を謳歌した時期、
日本企業だけが値上げができないと苦境に喘いでいました。
ラグジュアリー商品や機能性商品、そして地球や人に優しいウール製品を、その価値に
見合った価格で選択する流れとなれば、羊毛業界にとって追い風となるはずです。
来年、2022年の干支は「壬寅(みずのえ・とら)」です。
字義に鑑みれば「冬が厳しいほど春の芽吹きは生命力に溢れ、華々しく生まれる年になる」
と解釈されています。
羊毛業界がコロナという厳冬の後に華々しく生まれ変わることに貢献して参りたいと思います。
2022年1月1日
日本羊毛産業協会 会長 富田 一弥