新年あけましておめでとうございます。
昨年を振り返ると、世界的な新型コロナウイルス感染拡大(以下コロナ)が3年目になり、
欧米ではコロナ前のほぼ生活様式に戻り経済活動も順調に復活しているように思います。
日本においては、徐々に経済活動は回復してきましたが、行動規制緩和が欧米に遅れたため、
欧米との金利格差による円安やロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格上昇など、
急激に物価が上昇し始めており、大変業界各社にとって舵取りの難しい、厳しい1年でした。
私ども日本羊毛産業協会は、羊毛製品の価値向上と普及に向け、開発・情報発信を行う
羊毛産業の団体であり、日本繊維連盟に加入し他の繊維業界の各種団体と足並みを揃え
経産省やその他の政府機関に対して繊維業界活性化のための要望や意見を提出する活動を
続けています。
さて、現時点での国内での経営環境については、以下のようなものだと認識しています。
第一に物価の上昇です。第二に所得階層の二極化。第三にDXの進展。第四にSDGsの
流れの強まりです。
この状況は、大きな世界経済(日本経済)の流れの転換期にあると考えています。
日本の羊毛業界もこの変化に対応していかなければなりません。
上述したこの近年でおきた、パンデミック(コロナ)は欧米を中心に経済活動が回復し
後を日本が追いかけるかたちとなり、急激に消費需要が高まってきていますが供給が
対応しきれずに物価上昇がおきています。
さらにロシアのウクライナ侵攻などによる表面化した地政学的なサプライチェーンの
分断が更に、供給不足に追い打ちをかけている状況です。
又、世界の金利は急激な物価上昇を抑えるため引き上げられています。
経済の回復が遅れていた日本でも年末に金利は上りました。
今後、経済の回復とともに更に金利は上がるでしょう。
しばらくは、世界経済は以前の供給過多の状況から需要過多の状況に大転換していくと
考えております。
それは、ものを造れることの価値をあげ、日本の羊毛産業には追い風になると考えます。
消費の二極化は上質で、また吸湿性や消臭性を持つ高い機能性を持つウール製品の魅力を、
特に高級ゾーンでのウールの需要を高めます。
又、DXを通じたEC、D2Cの拡大は商流の合理化や在庫の削減を通じウール業界の負担を
少なくしてくれるはずです。
SDGsの流れは、天然素材であるウールの評価を高めてくれるだけでなく、ウール製品の
持つ長期間継続する上質感や保温・吸湿・消臭などの機能性が、使用期間を考えれば決して
高いものではなく、地球にやさしいことを教えてくれるはずです。
次に、今年の羊毛業界にとってのトピックは、2021年に開催予定であった「IWTO
(国際羊毛機構)総会」が今年の5月に京都で開催されます。
日本にとっては1984年東京でアジア初の開催から39年ぶりの2回目です。
当時の日本の羊毛業界は日本経済の成長を受けオーストラリアからの原毛輸入量が
世界一でした。
しかし、現在の日本は、羊毛商品の大量生産国から消費国へ変貌しており、国内での生産は、
尾州地区などを中心に特徴のある開発糸を使った魅力ある毛織物の産地と変化しています。
今後は世界とは差別化された日本独自の羊毛商品をグローバルに販売拡大していくことが
課題であります。
今年、京都に約30か国の羊毛産毛国、加工国、消費国が集まり、羊毛の持つサステナビリティ
を再確認するとともに、新しいテクノロジーを持ち寄り、新しいマーケットが開かれるような
会議になることを期待しています。
来年、2023年の干支は「癸卯(みずのとう)」です。字義に鑑みれば
「これまでの努力が実り始める年になる」と解釈されています。
羊毛業界が今までの長い冬の後花が咲き実がつくように邁進したいと思います。
2023年1月1日
日本羊毛産業協会 会長 富田 一弥